EN 60204-1に合格・適合するには?【CEマーキング】

➧ 目 次

  1. なぜこの規格なのか、この規格は何なのかを知ろう
  2. 評価試験に合格するには
  3. 試験所に依頼する前に
  4. 実施する試験の内容と対策
  5. 終わりに

CEマーキングにおいて、多くの機械製品はEN 60204-1規格に基づいて評価・試験されます。
本記事では、試験合格のための基本的な理解だけでなく、なぜ試験するのかーCEマーキング適合における、規格に基づく評価・試験の位置付けの理解についても解説します。

EN 60204-1:2018 Safety of machinery – Electrical equipment of machines Part 1: General requirements

機械の安全ー機械の電気機器 パート1:一般要件

この規格のイントロダクションには以下のように記述されています。

この規格書は、機械の電気設備に関する要求事項と推奨事項を規定し、以下の事項を促進します。

  • 人および財産の安全
  • 制御応答の一貫性
  • 操作および保守の容易さ
EN 60204-1:2018 Introduction より抜粋

多くの人が読み飛ばしているであろうこのイントロダクションを敢えて一番に紹介しているのは、この記述を注意深く読み、理解することが後々効いてくるからです。

続いて、適用範囲も重要です。以下のように記述されています。(抜粋)

IEC 60204のこのパートは、電気的危険以外の危険から人を保護するために他の規格または規則で必要とされる、または要求されるすべての要件(例えば、ガード、インターロック、または制御)を網羅しているわけではありません。各種類の機械には、十分な安全を確保するために対応すべき固有の要件があります。

IEC 60204のこの部分は、例えば次のような機械の電気機器に適用できる追加的および特別な要件を規定していません。

  • 屋外(すなわち、建物またはその他の保護構造物の屋外)で使用することを意図している機械。
  • 爆発の危険性のある物質(例えば、塗料やおがくず)を使用、処理、または生成する機械。
  • 爆発性および/または可燃性の雰囲気での使用を意図したもの。
  • 特定の材料の製造または使用時に特別なリスクを伴うもの。
  • 鉱山での使用を意図したもの。
  • ミシン、ユニット、およびシステム(IEC 60204-31 が対象)。
  • 巻上機(IEC 60204-32 が対象)。
  • 半導体製造装置(IEC 60204-33 が対象)。

電気エネルギーが作業工具として直接使用される電力回路は、IEC 60204 のこの部分の適用対象外です。

EN 60204-1:2018 1.Scope より抜粋

ここでの抜粋から漏れて説明されていない内容についても、しっかり目を通しておくことが大切です。規格の「概念」をきちんと捉えず、条文の表面的な理解に頼っていては、後で損をしたり、イタイ目を見ることにもなりかねません。

早速一つの「問い」を提示します。


このように問われて、絶句する人が実は多いのではないでしょうか。

上記の抜粋にある「すべての要件を網羅しているわけではありません」や、「〜を規定していません」といった文言に注意を払った方であれば、評価レポートだけあっても不十分であることに気づくはずです。

この問いは、CEマーキングにおける「規格とは何か」「適合とはどうあるべきか」という本質を問うているものです。

CEマーキングでは、

  • リスクアセスメントを技術文書に含めること
  • 整合規格は自由に選択でき、部分的な使用も認められている
  • 画一的な評価基準はなく、試験への合格を直接的に求めていない

こういったことを総合的に理解すれば、市場監査当局の担当者が評価レポートを受け取っても、「うん。それで?」と反応する姿を想像できるはずです。

なお、市場監査当局には、技術文書の提示を製造者に求める権限と責務がありますが、技術文書として具体的に何を提示すべきかは指定しません。「CEマーキングに適合すると宣言した者」であれば、必要な文書を自ら判断し、提示できて当然だからです。それができなければ、「形式的違反」として、直ちに是正対応を命じる理由となります。

CEマーキングには、試験に合格すれば適合と見なされるような“画一的な合否基準”は存在しません。
整合規格とは、指令・規則に定められた「必須要求事項(essential requirements)」を満たしているという“推定”を与えるものであり、「適合検査基準」ではありません。

ここで混同してはならないのは、「適合の推定(presumption of conformity)」と、「適合基準(conformity criteria)」は意味が違うということです。
整合規格は、あくまでも“技術的解決手段の一例”であって、「それに合格する=CE適合」と見なすのは勝手解釈です。

ここで強調しておきたいのは、「試験に合格すれば適合」という理解は誤りだということです。

メーカーが本来果たすべきは、「必須要求事項を満たしたと自ら判断し、責任を持って適合宣言を行うこと」です。

整合規格はその支援ツールであって、必須でも絶対でもありません。しかも、

  • すべての必須要求事項を網羅しているとは限らない
  • あなたの製品にとって最も適切であるとは限らない

—この前提のもとで用いなければなりません。

したがって、メーカーには次のことが求められます:

  • 製品に関連するリスクを自ら特定すること
  • それらのリスクから、指令・規則の「必須要求事項」を特定すること。
  • 特定した「必須要求事項」に対応し、自社製品に適した整合規格を選定すること

このことによって、「適合の推定」が、「製品の適合を説明する説得力のある実証結果」となります。

製品を、規格・規制のカタに嵌めることはCEマーキングの自由な市場流通の意義に反します。「整合規格の選択は自由であり、部分的に使用することも可能」とされている理由です。

ここまでを理解すれば、市場監査当局の担当者がレポートを受け取りながら「うん。それで?」と反応する理由—つまり、「レポートはレポートとして有用だが、これだけ?」—も、より明確にイメージできるはずです。

ここまで読みすすめられた方には、「レポート=技術文書」という理解は間違いではないが不十分と理解されたはずです。

「レポートは技術文書」とは言えますが、「技術文書はレポート」とは言えないのです。

レポートは製品の一側面について実証した結果を示すものであり、技術文書はレポートを含め、製品全体の適合性を提示するものです。技術文書の提示要求に対し、レポートだけを出すと、技術文書の不備であり「形式的な違反」に該当します。

要するに、レポートが技術文書内でどのような位置付けにあるか、またそのレポートで製品の適合性の何を説明しようとしているのかが、明確でなければなりません。

それは「試験目的」であり、その規格・試験を選んだ理由、すなわち、リスクアセスメントに基づき整合規格を選んだ、その判断と記録です。(指令・規則はこの意味でのリスクアセスメントを技術文書に含めることを要求しています。)

これはメーカー自身が決定することであり、コンサルタントに相談はしても、他人の裁可を仰ぐことではありません。

このように問われて一瞬ドキッとした読者も多いのではないでしょうか。

『製品の電気安全の側面を実証確認したレポートであり、その通りに、製品の電気安全の側面が適合していることを説明するものです。』
この答えは間違っていませんが、『だから?それで?』ともう一度訊き返されてもおかしくありません。

返答は簡単です。
『機械規則の必須要求事項X.X.XおよびX.X.Xです。』
100点。(足すことも引くこともありません。CEマーキング指令・規則と整合規格との関係性に基づいて明確に回答すればよいのです。)

2つの返答を比べてみてください。CEマーキングでは、このように、指令・規則の枠組みに沿ってシステマチックに適合を提示あるいは検証できる枠組みが整えられています。(すべて整いつくされているわけではありませんが。)

ここでは、必須要求事項の具体的内容は既知であること、そして、それへの適合を実証しようと整合規格を選択したのは他ならぬメーカー自身である(他者はアドバイスまで)という前提に立っています。

メーカーは製品が指令・規則に適合していると宣言するのであり、その内容を理解せず宣言することなど本来はあり得ないからです。指令・規則は欧州委員会のウェブページから無料でダウンロードできます。

指令・規則によって求められる、製造者の責務、技術文書の作成、必須要求事項の内容、リスクアセスメントの実施と記録、整合規格の役割など正確に理解すれば、自ずと上述の形式的な回答に行き着くはずです。

そしてこの形式的な回答を裏付ける確かな技術的根拠を示せなければ、それは「形式的な違反」ではなく、「適合の偽装」です。

ここまでは、EN 60204-1を正しく理解するための予備知識として、CEマーキングの中でどのように理解するか、整合規格とはどういったものなのか、画一的な適合基準などなく、メーカー自身が製品の適合を宣言し、技術文書を作成するその一環として、試験を実施し、レポートを作成することについての基本的な説明です。

詳しくは当社の参考記事をご参考下さい。


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ここからは、実際にこの EN 60204-1をどう理解し活用するのか解説していきます。

規格書を読んでいない方にはよくわからない内容となりますので、規格書と併せて読んでください。

「in accordance with the standard(規格に従って)」という言い回しはよく使われますが、「従う」と邦訳された途端に、無批判に従わねばならないかのように感じてしまってはいないでしょうか。
もちろん逆らえという話ではありません。ただし、“何のためにその条項があるのか”を考えず、規格の言う通りにすれば正解だと思い込むことは、「規格に使われている」状態に他なりません。

いずれにしても、メーカーは、指令・規則の内容、必須要求事項、採用した整合規格の内容を、モノづくりのプロフェッショナルとして十分に精緻に理解していることが求められます。

CEマーキングの恐ろしいところは、中身を理解しないまま形式的に対応しても、「それ違うよ」と誰も指摘してくれないことです。

「モノづくりのプロフェッショナルとして十分に精緻に理解している」とは、製品の構造、動作、関連するリスクと、指令・規則の必須要求事項、そしてこの規格書に書かれている内容を適切に設計に活かし、実証検査に役立てることです。

規格書を指示書のように扱って、ただ従えばよいと考えるのは本質から外れています。「なるほど、このようにしてリスクを許容レベルに低減するのか」「記述されている要件に対応するリスクが製品にはない。」「製品に関連するリスクがこの規格書で触れられてはいるが詳述されていない、他に詳しい規格書はないか。」「規格書の要件の通りにすると、過剰な対策になる、または十分な対策にならない、前提がマッチしていないのか。」

あらためて、この記事の冒頭で問いかけた「この規格はなんなのか」を思い出してください。目的を見失わないために、何度でも立ち返るべき視点です。

繰り返しになりますが、整合規格は法規ではありません。金科玉条のように崇め、規格を超える仕事を制限するものではありません。規格が自由闊達な製品開発を阻害するものであってはなりません。

整合規格には、製品が備えるべき多面的な安全性や電気的要求事項について、「一般に妥当とされる水準」が記載されています。確かにこれらに適合すれば、法規の必須要求事項を満たしていると“みなされる”(適合の推定)ことになります。しかしながら、この通りに設計せよ、適合判定基準である、とはどこにも記述されていません。使っていいよ、と助け舟を出してくれているのです。(必須要求事項を満たせ、とただ突き放していない。)

メーカーが十分に検討・判断することが難しい側面については、整合規格を参照し、「一般的にはこのように対応するのだな」と受け止め、「この手段で製品のリスクが許容レベルに低減できている」ことを、設計の根拠として明示的に説明できるようにし、その内容を公式に提示できるよう準備すればよいのです。

重要なのは、規格に合わせて製品を作るのではなく、製品の安全と適合性を保証するために、規格を活用することです。

従来、整合規格には、「この規格○○指令への適合を与える」旨の記述、つまり「整合規格」である旨の記述がありました。

近年では、整合規格の附属書(Annex ZZ 等)に、指令・規則の必須要求事項と規格書の各条項を対応付けた一覧表が掲載されるようになりました(すべての規格に添付されているわけではありません)。

たとえば、エネルギー源からの分離については、規格書の5.3と10.8に記述されています。

それならばと、「規格書5.3と10.8に合格すればよい」と考えること自体は間違いではありませんが、単純にそれだけでは不十分です。「適合の推定」付与されますが、必須要求事項のエネルギー源からの分離についての合否判定基準が5.3と10.8ではないからです。

規格書 EN 60204-1 の5.3と10.8は、機械指令の必須要求事項のエネルギー源からの分離について、完全にはカバーしていないことが確認できるでしょうか。必ず自分で確認し、そして自社製品はどうか確認する必要があります。

自己宣言
自分で調べる、 自分で決定する

製品の用途、構成、動作原理と規格書の要件はマッチしているか、分離することが危険を招くか、エネルギーの消散についてはどうか、そもそもカバーされているのは電気的側面のみであり、油圧や空圧のエネルギーは?
必須要求事項を確り理解して、ひとつの方法として規格を用いるー整合規格はあくまで手段であり、目的ではありません。

規格の通りに設計すること自体は悪くありません。ただし、その背景や目的を理解せずに、盲目的に従っているだけでは本質を見誤ります。

最も重要なのは、「規格に適合していても事故は起きる」という事実です。実際に、過去にはEN規格に適合していたシュレッダーで指を切断する事故が複数発生しました。つまり、規格への適合は、製品の安全性を保証する絶対的な盾ではないのです。

「じゃあどうすればいいんだ!」という機械的な発想を一度脇に置きましょう。規格は万能ではないと認め、その限界も理解した上で、あくまで“ツール”として使いこなすことが重要です。CEマーキングは、整合規格に「従え」とは一言も言っていません。

他方、規格は有識者、産業界、消費者など多くのステークホルダーの知見が織り込まれた、極めて有益な情報の集積です。自分たちでは思い至らない重要な視点が記載されていることもあります。新しい知見が取り入れられ、不要となった内容は削除される―そうして定期的に改訂されていく生きたドキュメントです。参照し、学び、妥当と判断すれば、自社の設計基準に取り込めばよいのです。

規格の通りに設計していたとしても、万が一事故が発生した場合に、その責任を規格が肩代わりしてくれることはありません。規格は「事故が起きても免責される証拠」ではありません。あくまで、製造者自身の判断や設計に妥当性があることを示す一つの根拠にすぎないのです。

CEマーキング制度の根幹には、製造者が自らリスクアセスメントを行い、製品の安全性を確保するという思想があります。それが適切な場合に、整合規格を援用することが認められています。

整合規格の「適合の推定」を過信し、「規格に合格した=指令に適合している」と単純に考えてはいけません。
本当に必須要求事項を満たしているのか、自社製品の安全性が確保されているのか―それを判断するのは他でもない、製造者自身の責務です。

もし、形式的な適合だけで自由流通していた製品に事故や不適合の疑義が生じれば、「適合宣言は偽装だった」と疑われても反論できない状況になりかねません。

・変化に対応できない

指令・規則の改定、整合規格の改定、部品の生産中止、設計変更などに直面したとき、適切な判断や対応をとれません。

・不必要なコストを要する

本来不要な構造や部品、評価・試験、コンサルティングにかかる費用など。競争力を損ないます。

・受注機会の喪失

顧客からの指令・規則や規格を踏まえた問い合わせに的確に対応できず、信頼を失います。「分かっていない」ことが露見することも。

・協力外注、サプライヤーへの無理難題

自社の理解不足からくる曖昧な要求が、外注先やサプライヤーを困らせ、関係悪化や品質トラブルを招く恐れもあります。

規格を読まず、理解せずに、合格した — それはよいですが…

CEマーキングの恐ろしいところは、中身を理解しないまま形式的に対応しても、「それ違うよ」と誰も指摘してくれないことです。【再掲】

決して安くはない費用を払って手にしたレポートの内容を理解していない、合格した設計を『絶対に変更してはならないもの』のように扱い、手段と目的を取り違えたまま、硬直した設計方針を推し進め、その解決を他人に委ねてしまう──。
しかし『自己宣言』は、他人に解決してもらうものではありません。自分で学び、理解し、判断するものです。

製品に関連するすべてのリスクを許容レベルにまで低減させることが本来の目的であるにもかかわらず、CEマーキング制度を誤解あるいは拡大解釈した手続き論に終始する — 『これがレポートです。』『うん。それで?』の繰り返しです。

ここまで読みすすめられた方はすでにご理解いただいていると思いますが、「よくわからないが試験する」「よくわからないがレポートを技術文書に添付する」これでは、CEマーキングで製造者に求められる “Obligations of the manufacturer” を果たしているとはいえません。

単に「やり方」だけを身に付け、模倣するだけでは・・・

当たり前のことですが、事前に正しく規格書を読み、合格するようにあらかじめ設計・製造することです。

何のための合格するのか、合格してどうするのか — このように問うのは、合格は手段であって目的ではないからです。この記事の前半を何度でも読み返してください。

『時間がないから、ちょっと簡単に教えて』は通用しません。製品を適切で安全に設計・製造することは、メーカーにとって中核的な業務であり、自社で確立すべき領域だからです。

端的な質問や相談に対しては、一般論で端的な回答しかできません。指令・規則、そして規格書をよく読み、ご自身のケースについてできる限り具体的にご質問・ご相談ください。

具体的ではなく、「わからないから教えてください」とのご要望は、総合コンサルティングにて承ります。


EN 60204-1は、第4章から「装置の電気機器」に関する要件が記述されています。


基本中の基本(項4.1)

まず、機械装置全体のリスクアセスメントの一部として電気機器に関連するリスクもまた評価されなければならない、と記述されています。

設計・開発プロセスにおいては、危険源とそこから生じるリスクを特定しなければならない、とあります。

つまり、EN 60204-1による技術的評価に先立って、機械装置としてのリスクアセスメントがすでに実施されていることが前提になります。

また、リスクアセスメントを行い、この規格に基づく評価を行うには、装置の基本条件や仕様が明確であることが必要です。この点については、規格の附属書B(Annex B)に参考情報が掲載されています。

この項4.1は、IEC Guide 51で定義された「安全設計の3ステップメソッド」を基本とし、それをEN 60204-1に即して具体化した構成と考えられます。IEC Guide 51は、規格作成者が安全の原則をどう取り入れるかのためのガイドですが、ユーザーにとっても、規格の根底にある安全設計思想を読み解くための指針となります。

EN 60204-1全体においても、この原則に基づいて構成・記述されている箇所が、項4.1をはじめ随所に見られます。

EN 60204-1の各所において、「リスクアセスメントと仕様の明確化」が前提とされていることは、以下のような条項の記述からも明らかです。

  • 4.4.1 When special conditions apply or the limits specified are exceeded, an exchange of information between user and supplier (see 4.1) can be necessary.
    特別な条件が適用される場合、または指定された制限を超える場合は、ユーザーとサプライヤー間の情報交換(4.1参照)が必要になる場合があります。
  • 9.2.3.3 Stop category 0 and/or stop category 1 and/or stop category 2 stop functions shall be provided as indicated by the risk assessment and the functional requirements of the machine (see 4.1).
    停止カテゴリー 0 および/または停止カテゴリー 1 および/または停止カテゴリー 2 の停止機能は、リスク評価および機械の機能要件に従って提供されなければなりません (4.1 を参照)。
  • 9.4 Where failures or disturbances in the electrical equipment can cause a hazardous situation or damage to the machine or to the work in progress, appropriate measures shall be taken to minimize the probability of the occurrence of such failures or disturbances. The required measures and the extent to which they are implemented, either individually or in combination, depend on the level of risk associated with the respective application (see 4.1).
    電気機器の故障または障害が危険な状態を引き起こしたり、機械または仕掛品に損傷を与えたりする可能性がある場合、そのような故障または障害の発生確率を最小限に抑えるための適切な措置を講じなければならない。必要な措置およびその実施範囲(個別または組み合わせ)は、それぞれの用途に関連するリスクのレベルに依存する(4.1項参照)。
  • Annex B The use of this enquiry form can facilitate an exchange of information between the user and supplier on basic conditions and additional user requirements to enable suitable design, application and utilization of the electrical equipment of the machine (see 4.1) particularly when the conditions on site can deviate from those generally expected.
    この問い合わせフォームを使用すると、特に現場の状況が一般に予想されるものと異なる場合に、機械の電気機器の適切な設計、適用、および利用を可能にするための基本条件と追加のユーザー要件について、ユーザーとサプライヤー間の情報交換が容易になります (4.1 を参照)。

項4.1で示される基本原則は、規格全体の根底にある設計思想であり、試験や適合性判断の際には、単に個別条項の適合を確認するのではなく、常にこの基本原則に立ち返って、全体としての安全設計の妥当性を再確認すべきです。

電気機器の選択(項4.2)

この規格では、電気機器(電装品等)は、機械装置メーカーがサプライヤーから供給を受けて、自社の装置に組み込む対象であるという前提が見て取れます。

すなわち、メーカーは、電気機器を適切に選定し、機器に関連する安全規格への適合を確認し、その用法を理解し正しい条件で組込・使用しなければなりません。(項4.2.1)

以降、電源仕様(項4.3)、環境仕様(EMC含む)(項4.4)、輸送・保管(項4.5)、取扱(項4.6)で定められた要件を満たすよう、電気機器が選定、組み込まれ、使用されることが求められます。

これらは国際的に標準的な仕様条件とされています。特別な条件がある場合にはその旨を明確にし、機械装置全体のリスクアセスメントとの整合性を確保する必要があります。特にことわりがない限り、これらの「標準条件」に適合しているものとして評価が行われます。

加えて、自社で製作した電気機器やカスタムコンポーネントを装置に組み込む場合には、この規格による評価だけで十分かどうかを慎重に検討する必要があります(特に項4.2の観点から)。
第三者認証や別の規格適合を要する場合もあり得ます。

機械装置への電力供給は、もちろん安全に行える必要があります。ここでいう「安全に行える」とは、電源接続や遮断の操作が、使用者にとって危険を伴わず、確実に行えるよう設計されていることを意味します。そのための具体的要件が、標準として記載されています。

電源ケーブルおよび保護導体(PE)は、定格に見合ったもので、想定される設置環境に適した耐性が求められます。電源接続端子も、そうしたケーブルを安全に固定・接続できる構造である必要があります。

電力供給の遮断も、安全かつ確実に行える必要があります。多くの場合は装置側に主電源スイッチを設けますが、必須というわけではありません。それが適切ならば、プラグ引き抜き方式や分電盤側での遮断でも良いとされています。

電源が「切れていないのに切れているように見える」、あるいは「切ったつもりでも完全に遮断されていない」、これはダメです。

また、電源を切りたいときは、緊急時など「あわてている」状況も想定に含める必要があります。そのような場面でも、素早く・確実に・安全に遮断できることが求められます。操作レバーの大きさ・固さ・配置・識別表示なども、視認性と操作性の観点から適切でなければなりません。

さらに、主電源スイッチをロックデバイスと併用して「オフ位置に固定」できることも求められます。これは、保守作業中など、誤って電源が入れられないようにするための措置であり、作業者の安全確保のために重要な機能です。

電源遮断における遮断定格や設計上の考慮点など、より詳細な内容については個別にご相談を承っております。

機械装置で感電事故を引き起こすなどあってはならないことです。この第6章では感電防護に関する方策が掲載されており、参考にできます。ただし、項4.1の基本的な安全原則を十分に理解したうえで活用することが重要です。

この第6章を流し読みしたり、断片的に拾い読みすると誤解が生じやすくなります。単語の意味を単に辞書的に捉えるのではなく、その背景にある概念をしっかり理解することが重要です。

各項目は大項目・中項目の中に位置づけられていますので、どの大項目・中項目における記述・要件かをよく確認してください。

感電のリスクがある部分と、そうでない部分をしっかり分別することがまず重要です。感電リスク部分をまず限定的にした上で、その部分の感電防護として適切な防護方策を用いることです。

自動遮断による感電防護については、当社記事もご参考ください。

主電源の切断を兼ねる場合は、第5章の要件も兼ね合わせて適用する必要があります。

海外製の保護器が示す「定格電流」は、あくまで「その電流で使用できることを保証する値」であり、「その電流で保護動作する値」ではない点に注意が必要です。

遮断器は、設計上の最大電流と、電線や部品の定格電流のあいだで適切に動作する必要があります。逆にいえば、遮断器が動作する電流を上回る定格が、下流の電線や部品には必要です。

突入電流によって保護器が誤動作することがあります。そのため保護器の動作電流を安易に引き上げるのではなく、慎重に判断する必要があります。
いざというときに、本当に保護動作が機能し、部品や電線の最大定格を超える前に遮断されることが重要です。一般的には、動作電流の引き上げではなく、応答特性の遅いものやイナーシャディレイ付きの保護器を選定することで対応します。

この第7章は、過電流保護についてのみ記述されているわけではありません。異常温度、電圧低下、モーターの過速度、相順、過電圧・サージ保護、そして短絡電流などについて記述されています。必ず項4.1および項4.2の基本原則と併せて読解することが重要です。

保護アース(と機能アース)は、それだけで第8章が丸ごと割かれるほど、非常に重要な要素です。

一口に「アース」といっても、目的に応じて厳密に分類されていることを理解する必要があります。

保護アースは、敢えて例えるなら「高所作業時の命綱」、いざというときに絶対にその機能を発揮しなければなりません。そのための要件がこの第8章では記述されています。

適切に保護機能を果たし、また、簡単に切れたり、外れたり、外した後付け忘れたり、劣化するような構造は認められません。

当社では、規格書の図4のように、保護アースを明示的に電気接続図に記述することを推奨しています。(図4そっくりに真似ても適切とはいえません。)

図面上でアース記号を多用して省略するのではなく、L1・L2・L3などと同等以上の重要度で、明確に描くことが重要です。具体的に「何と何を保護アースとして接続しているのか」が一目で分かる図面は、実務上非常に有用です。

保護アースは手を抜いてよいものではありません。

  • 保護アース線の両端はそれぞれ何と何か
  • 端子の数、アースバーの穴はいくつ必要か

ノード(接続点)を示す黒丸(●)は、誤解や曖昧さを生むことがあるため、使用を推奨しません。

この第9章も、項4.1の基本的な安全原則を十分に理解したうえで活用することが重要です。

制御回路は、主電源の過渡電圧や他の回路の故障などから影響を受けないように設計され、どのような条件下でも正しく動作することが求められます。
また、制御回路自身に故障が発生する可能性も常に想定されなければなりません。その場合でも、制御機能の喪失が直接的に危険な結果につながらないような設計上の工夫が必要です。

安全の立場からは、故障が起こることを常に前提に設計を考える必要があります。
そのうえで、たとえ故障しても「安全側に故障する(fail-safe)」という設計思想が基本になります。

もちろん、「故障しても正常に動作せよ」といった無理を求めているのではありません。
故障しても、人に危険を及ぼさない状態に確実に移行するように設計してくださいということです。

ひとつの部品が故障する際は、発煙・発火に至る前におとなしく故障し、かつその故障モードが予測可能であること(開放故障か短絡故障かが明確であること)が望ましいとされます。

たとえば、リレーのA接点は、通常は開放側に故障する構造になっているはずです。しかし接点溶着といった短絡故障モードも想定しておく必要があります。

また、スイッチ類、とくに非常停止など安全に関わる用途では、強制乖離機構(positive opening operation)を備え、電気的接続を確実に開放する構造のものを採用すべきです。

回路設計におけるフェイルセーフも重要です。特に安全制御に関連する回路では、「無応答」を「安全(正常)」と誤って認識させないように回路を組む必要があります。

回路の開放故障や短絡故障、電源の喪失などが、「危険」を検知せず、「安全(正常)」と装置が認識したまま運転を続けることは事故に直結します。

リスクがあり、これを「安全制御」で解決しようとすれば、その「安全制御」の有効性、信頼性を問われるのは当然です。『安全デバイスをつけたから安全』というためには、それが実際に有効で、いつでも確実に動作することを説明できなければなりません。安全装置を「ただつけただけ」では、安全とは言えません。そもそもリスクが無いことの方が勝ります(3ステップメソッドのステップ1)。必要最低限のリスクにしておいてから、防護策を採ります(ステップ2)。

規格書には多くの回路例が示されていますが、その意味・エッセンスを理解して適切に活用しなければなりません。上述の他にも、重要な概念・要件が記述されています。

  • 人の有意な操作(=スタートボタン押下)以外では、すなわち電源再投入やインターロック再許可、モード変更等で、機械が勝手に始動してはならない。
  • OFF(とくに非常停止)は他の制御に優先する。ただし、それがかえって危険を招かない場合に限る。

制御で安全を担保している場合は、別途評価が必要になります。ただし、リスクが低いと評価できる場合は、それ以上の詳細な評価は不要です。

リスク評価をサポートします。

EN ISO 12100を基礎とし、EN ISO 13849-1のリスクアセスメントを取り入れたテンプレートは、安全関連制御も含めて製品全体を一貫して評価できる強力なツールです。

テンプレートの提供及び、ご要望であればリスクアセスメントワークショップを開催し、一緒にまとめ上げていきます。

操作は安全にできることが求められます。機械装置が危険を呈している状況も考慮に含めて、操作者に危険が及びにくい位置・方法で、機械装置自身と周辺すべての安全を確認しながら操作できることが必要です。

操作者に無理な姿勢を強いる設計や、長時間の操作を要する構成、誤操作を誘発するような配置や表示は避けなければなりません。

たとえば「リスクが高まる方向への操作(例:プロセス始動など)」には、保護カバーの設置や再確認操作(ダイアログ表示による確認など)を求めるといった、意図しない操作を防止する措置が有効です。一方、「安全側への操作」は、誰にでも容易に実行できるようにすべきです。

操作ボタンやレバー、表示灯の色と記号についてこの10章で標準的な仕様が規定されていますが、ユーザーの要求仕様で指定されているならばこの限りではありません。ユーザーとして合理的な理由がある場合があります。ただし、誤解や混乱を招いたり、リスクを増大するような指定はユーザーに対して変更を促すべきで、その際には規格書をメーカーの立場を護る盾として用いることもできます。

非常停止に関するボタンやレバー、ワイヤーなどは緊急時に即座に扱えることが重要です。荒っぽい操作にも耐え、壊れにくく、探し回らずに短時間でアクセスでき、機械に拘束された状態でも届く位置にあることが求められます。

非常停止は、あくまでも最後の安全バックアップ手段です。非常停止スイッチの設置によって安全性が確保されるわけではなく、あくまで“万が一”に備えた対策にすぎません。非常停止ボタンだらけの機械装置を安全とは言いません。非常停止の使用を前提とせず、リスクが許容レベル以下であることが重要です。

各制御機器は、安全に点検や保守作業を行えるように設計・配置されている必要があります。

明確な表示(部品番号や盤名など)を伴って系統的に分類・配置されていること、また各制御機器がその使用環境(IP等級、温度など)の範囲内で設置・使用されていることが重要です。

また、実際の作業において、かがみ込まなければならない、あるいは関係のない他の部品を一旦外さないとアクセスできないといった配置構成は避けるべきです。

点検・保守に必要な作業空間が明確に指示されていることも重要です。壁や他の装置に近接して設置した結果、ドアが開かない、工具が使えないといった重大な問題が発生する可能性があります。したがって、比較的頻繁に点検や保守作業が必要な場合には、安全かつ容易に作業が行える配置とするか、それに代わる工夫を施すべきです。

たとえば、グリス注入口を安全に作業できる位置まで引き出すことで、装置のコストはわずかに増加しましたが、リスクが低減され、高度な作業が不要となり、稼働停止時間の短縮にもつながった実例があります。装置を停止したり、装置によじ登ったり、部分的に解体したりしなくても、グリス注入器さえ扱えれば作業できるようになった、ということです。

電線やケーブルは、定格電流を超えないように設計するだけでなく、実際の使用条件に対して十分な余裕を持って選定する必要があります。

許容電流は、設置環境や使用状況によって大きく変動するため、慎重な確認が必要です。環境温度や、電線の束ね方による放熱の阻害などを考慮し、補正係数を適用してサイズを決定することが重要です。温度が高い部品の近くを通る場合も注意が必要です。

また、可動部に接続する電線・ケーブルにはいわゆるロボットケーブルなど、繰り返しの屈曲に耐性のあるケーブルを選定しなければなりません。

電圧については、「使用電圧」はもちろん、必要とされる耐電圧性能を満たしていることを確認する必要があります。

全ての配線、とくに保護アースは、しっかりと接続され、断線しないようにしなければなりません。この第13章ではそのためにどうするべきか、何をしてはいけないかについて記述されています。

第11章で電気機器が系統的に分別整理され配置されていること同様、配線も整理されていることも基本です。たとえば、動力/制御、危険電圧/PELV回路、ノイズを含む/ノイズに弱い、など。ラインノイズフィルターの1次側と2次側の配線を近接させることは避けるべきです。また、電流が流れれば磁界は発生し、意図せずにIHヒーターと同様の効果が生じて異常発熱することもあります。

高温あるいは低温、可動要素との接触、振動などにも配慮し、適切な配線コースをとり、適切に固定しなければなりません。電線の絶縁被覆の劣化や摩耗を避ける必要があります。紫外線や腐食が想定される場合は相応の対策が求められます。

基本的に、端子など電気接続部分にケーブルの引っ張り・押し込み・回転の応力がかからないようにするべきですが、あまりに近接して電線被覆を固定すると、芯線の伸縮(熱や屈伸に起因)による応力を逃がすことができず、少したわみをもたせて固定する必要があります。当然ながら、脱着作業に必要な余長を残しておくべきです。

ひとつの端子にひとつの電線を接続することが原則です。端子圧着も制限や手順を守って正しく行われなければ、「ちぎれ」または「スポ抜け」を引き起こします。

ケーブルの最小曲げ半径より小さく曲げてはいけません。また、損傷や劣化を受ける影響から守られている必要があります。「止めネジ」がケーブルにあたっていないか注意してください。

筐体内外を通す場合に、筐体に求められるIP等級を損なわないようにすることも求められます。ダクトやフレキ管等に関する記述も見落とさないようにしてください。

電線・ケーブルの識別も重要です。一般によく見られるワイヤーチューブは適切です。

保護アース電線の被覆の色について

The protective conductor / protective bonding conductor shall be readily distinguishable from other conductors by shape, location, marking, or colour. When identification is by colour alone, the bicolour combination GREEN-AND-YELLOW shall be used throughout the length of the conductor. This colour identification is strictly reserved for protective conductors/protective bonding conductors.

保護導体/保護ボンディング導体は、形状、位置、表示、または色によって他の導体と容易に識別できなければならない。識別が色のみによる場合、導体の全長にわたって緑と黄色の2色の組み合わせを使用する。この色による識別は、保護導体/保護ボンディング導体にのみ限定される。

For insulated conductors, the bicolour combination GREEN-AND-YELLOW shall be such that on any 15 mm length, one of the colours covers at least 30 % and not more than 70 % of the surface of the conductor, the other colour covering the remainder of the surface.

絶縁導体の場合、緑と黄色の2色の組み合わせは、15mmの長さにおいて、一方の色が導体表面の30%以上70%以下を覆い、もう一方の色が残りの表面を覆うようにしなければならない。

Where the protective conductor(s) can be easily identified by its shape, position, or construction (for example a braided conductor, uninsulated stranded conductor), or where the insulated conductor is not readily accessible or is part of a multicore cable, colour coding throughout its length is not necessary. However, where the conductor is not clearly visible throughout its length, the ends or accessible locations shall be clearly identified by the graphical symbol IEC 60417-5019:2006-08 (see Figure 16) or with the letters PE or by the bicolour combination GREEN-AND-YELLOW.

保護導体が形状、位置、または構造によって容易に識別できる場合(例えば、編組導体、非絶縁撚線導体)、または絶縁導体に容易にアクセスできない場合、もしくは絶縁導体が多心ケーブルの一部である場合は、全長にわたって色分けを行う必要はない。ただし、導体が全長にわたって明瞭に見えない場合には、端部またはアクセス可能な位置を、図記号 IEC 60417-5019:2006-08 (図 16 を参照)、文字 PE、または緑と黄色の 2 色の組み合わせで明確に識別する必要があります。

「色のみ」で識別する場合に、緑/黄色にする必要があります。保護アースを識別できればよく、その方法は「色のみ」ではありません。製造者としての責務を果たすには、規格の要件を自ら正しく理解しておくことが何より重要です。

EN 60204-1:2018 13.2.2 Identification of the protective conductor / protective bonding conductor より抜粋

電線の色に関する要件は、「色のみで識別しようとする場合」「推奨」等の言葉を伴っていることに注意してください。ただし、混同が生じるような色使い、特に保護アースの緑/黄色と混同させることは避けなければなりません。

他方、電気機器と配線は系統的に分別整理されていることが求められています。必ずしも項13.2.4の通りの色にすることは必須ではありませんが、適切な色分けは推奨されます。

まず重要なことは、項4.1を振り返り、そのスピード、力、大きなモーターが本当に必要なのかをよく検討することです。

適切なモーターを選択し、その取扱いに従い、注意事項を逸脱せず機械装置に組み込むことになります。安全規格に適合しているモーターと関連機器は、適切な指示をユーザーに提供しなければならず、その通りに用いることが重要です。

当然ながら、モーターと関連機器の性能、仕様項目をよく理解している必要があります。各モーターメーカーは一般的にとても詳しい技術資料をユーザーに提供しています。

機械装置から電源を供給する場合は、工業用プラグ・ソケットの組み合わせを採用し、誤接続を防止することが望ましい。汎用のプラグをもつ機器との接続を前提にしている場合は、汎用のコンセント形状にする必要がありますが、嵌合するものは何でも接続されてしまうことを想定する必要があります。

電圧・電流表示、保護アース導通はもちろん、個別に遮断器を設ける必要があります。

照明についても、まず暗いところを覗き込まないで済むように設計することが大切です。

昨今ではLED照明が普及しており、電球・蛍光灯の交換作業をなくし、AC電源線を引き回して感電リスクを広げる必要はなくなりました。AC電源直結型のLED照明(インバーター内蔵型)を使用する場合は、AC電源への感電と火災のリスクを考慮し、EMCについても確認する必要があります。

警告表示はもちろん重要ですが、安全の基本はリスクそのものを低減することです。安全を使用者の運用や注意力頼みにしてはいけません。

このドアを開ける、カバーをとる、オブスタクル(ジャマ板)の向こうには、感電の危険がある、やけどの危険があるときに、ドアやカバーに感電マークややけどマークを目立つように貼り付けます。

計器類やスイッチ類のタイトルも明確に表示する必要があります。

筺体、制御盤、機器・コンポーネントは、電気接続図やパーツリストの「部品番号」がその機器上や近傍にシール等で明確に識別できなければなりません。

装置のトレーサービリティ、装置自身を特定できる情報、つまり装置銘板も設置後に隠れない箇所に表示する必要があります。電源定格に関しては電源接続ポイントの近傍に表示することが求められます。

ここでいう “Technical documentation” とは、納品先に提供すべき必要な技術的情報文書一式です。

CEマーキングや規格への適合判定に必要な資料と、この第17章での「技術文書」は重複しますが、提供先と目的が異なります。CEマーキングや規格への適合には、「ユーザー対して必要な情報を適切に提供しているか」についても判定が含まれており、主に社内や市場監視当局向けです。この第17章で求められている文書はユーザー(使用者・保守者・設置者)に対して提供されるべきものです。

たとえば、機械指令の必須要求事項 1.7.4について要件を満たしていることをメーカーは「CEマーキングの技術文書」で提示しなければなりません。EN 60204-1のこの第17章は、必須要求事項1.7.4を満たすとはどういうことか、具体化されています。(ただし、電気的側面についてのみです。)規格の要件は、項4.1のリスクアセスメントに基づきます。取扱指示書やメンテナンスマニュアル等に、対象者に必要な情報、手順説明や警告・注意が適切に示されていることを確認し、確認した結果をレポートとして、リスクアセスメントの内容と併せて「CEマーキングの技術文書」に含めることになります。

ユーザーがリスクに関連して製品や手順を理解するために必要であれば、電気接続図やパーツリスト等も適切な形で提供します。これらは第17章の要求に応えるものであると同時に、必須要求事項1.7.4を満たす“証拠”として、レポートやリスクアセスメントの記録とともに「CEマーキングの技術文書」に含めます。

その他、ユーザーに提供される文書の例と関連する規格書の一覧が、規格書 EN 60204-1の附属書Iにあり参考になります。機械的にこれら文書を作成提供せよといっているのではありません。ユーザーに提供すべき図書はあくまでリスクアセスメントに基づくことに注意してください。

この第18章は最後の章であり、項4.1のリスクアセスメントを基礎として、第4章~第17章の要件に適合していることを前提に、機械装置が実際にその通りであるかどうかを確認します。

あくまで、第4章~第17章まですでに適合していることが本筋であり、この第18章で実施される試験等は補完的な確認、記録であって、主要な証明手段ではありません。

具体的なコメントは、この後の「実施する試験の内容と対策」に譲ります。

技術文書を作成する一環としての評価・試験

CEマーキングにおいては、評価・試験は自社で実施し、レポートを作成することができます。(ノーティファイドボディの関与を必要とする一部例外を除く。)もちろん試験所に評価・試験を依頼して、レポートを作成してもらうこともできます。

しかし、適合の判断は、他人に委ねるものではありません。 CEマーキングは自己宣言する制度であり、責任をもって最終判断を下すのは製造者自身です。

そして、自社でできるようになることが本質的に重要です(自社ですることが合理的な範囲内で)。開発・設計に直結するからです。

メーカーは、CEマーキングにおける製造者の責務や、製品適合における試験の制度的な位置付けを正しく理解した上で、試験所に対して「何のための試験か」「どの規格・項目に対する試験か」を明確に伝え、齟齬のないよう業務を依頼することが重要です。

まるっきり他人任せにして合格を祈るのではなく、CEマーキング、整合規格の役割、規格書の要件等、できるだけ自身で理解し、設計に反映していることが大切です。

最初から全部わからなくても、これは製品に関係ない、これは要件に適合する、これはわからない、などと仕訳していきましょう。実はこれがCEマーキングにおけるリスクアセスメントの第1歩です。この積み重ねこそが大事なのです。

コンサルタントに相談することで、結果的に短時間(すなわち低コスト)でより確実に理解が進むことが期待できる場合が多いです。ただし、できるだけ具体的に相談する必要があり、単に「どうしたらいい?」では一般論になります。どうしたらいいかは、指令・規則や規格書に書いてあります。


基本的に、機械装置がどの様なものかわかる資料、適合といえる根拠となる関連資料はすべて必要です。見積の段階では、まず依頼しようとする対象がどの様なものか、概要が分かる資料(ウェブページでも良い)を提示することです。

概要に対しては概算見積もりを得ることができるかも知れませんが、これを確定的な費用として扱うべきではありません。あくまで概算です。確定的で精度の高い見積を求めるならば、適切なテストプランを見積資料として提示する必要があります。試験見積の根拠はテストプランです。

テストプランはリスクアセスメントの結果を反映し、試験対象に沿って的確なものである必要があります。リスクアセスメントが的確であるためには、試験対象の制限事項や前提条件、仕様等が明確に定められている必要があります。

実施する業務が画一的に決まっている、たとえば公営の工業試験所などは、試験ごとに試験料が定まっていますが、CEマーキングにおいて試験は、規格 EN 60204-1 の項4.1にもあるように、リスクアセスメントを基礎として、実施するべき試験をメーカー自身が決定するのであり、画一的にこれこれの試験に合格せよなどと定められているものではありません。どのような試験をどのように実施するか決定したなら、自身で試験するもよし、適切なら試験所に依頼しても構いません。

わからないことは全部コンサルタントがやってくれる ー コンサルタントはそのような存在ではありません。そのようなコンサルタントはもはやコンサルタントではなく、製造者です。メンターやトレーナーとしての働きを期待する場合はその旨で契約する必要があります。


すでにそのように試験を丸投げし、対価を支払い、レポートを受け取ったことがあるかもしれません。ここで、この記事冒頭の問い『評価レポートが出来上がりました。それで?』に戻ります。

試験所の業務は『規格書の通りに試験しレポートを作成する』ことであり、リスクアセスメントに基づく規格・試験選定の責任までは負いません。 にもかかわらず、その判断を任せてしまっては、製造者が果たすべき責務を放棄したことになります。

CEマーキングの恐ろしいところは、中身を理解しないまま形式的に対応しても、「それ違うよ」と誰も指摘してくれないことです。【再々掲】

もちろん殆どの試験所が親切に対応してくれることでしょうが、製造者の責務(”Obligations of the manufacturer”)を肩代わりしてくれることはありません。

リスクアセスメントを適切に実施し、技術文書に含めるのは、製造者に固有の責務であって、他者に代行させることはできません。サポートは可能です。

ここまで長々と「前置き」を書いたのは、規格に合格することは、適切で安全な製品を世に出すことのほんの一部に過ぎないからです。本当に問われているのは、『なぜその試験をするのか』『その結果をどう使うのか』という製造者の意思です。


端的に言えば、本文の要件をしっかり満たしていれば、特別な対策は不要です。第18章のところで述べたように、これら試験は、補完的な確認作業であるからです。

第18章に記述されている各種の確認は以下の通りです。

  1. 電気機器が技術文書に適合していることの検証
  2. 保護ボンディング回路の導通の検証(項18.2.2の試験1)
  3. 自動電源遮断による故障保護の場合、自動電源遮断による保護の条件は項18.2に従って検証されなければならない
  4. 絶縁抵抗試験(項18.3参照)
  5. 電圧試験(項18.4参照)
  6. 残留電圧に対する保護(項18.5参照)
  7. 項8.2.6の関連要求事項が満たされていることの検証
  8. 機能試験(項18.6参照)

その他、明記されていないが付随する項目

  • 温度
  • 音圧測定
  • レーザー、UV
  • 電磁界暴露

「電気機器」が認証品かどうかの確認ではありません。そこを取り違えないよう注意が必要です。

ここでいう電気機器類とは機械装置に付随している電気機器類一式を指しており、それらの技術文書、すなわち回路図、部品リスト、そして実物近傍の部品番号表示と実物が一致しているかを確認することです。

それらの適切性(選定や設計の妥当性)を評価すること自体は、第4章~第17章において実施済であることが前提です。電気機器が認証品かどうかは主に項4.2で確認することであり、この18.1 a)では、実機を確認するのみです。

評価は、設計通りに製造され、完成された実機を対象に実施することが当然です。

外部に評価を依頼する場合は、事前に社内で確認するための日程を確保し、余裕をもって臨みましょう。

二重絶縁・強化絶縁、その他の感電防護方策により保護アースを必要としない部分を除き、保護アースが接続されている部分については、その検証として本試験を実施します。

第8章の図4で示されている保護アースは、検証すべきです。

合否判断は、設計時に想定した抵抗値との整合性に基づきます。
『測定された抵抗値は、関連する保護導体および保護ボンディング導体の長さ、断面積、および材質に応じて予想される範囲内でなければなりません。』

つまり、

  • 感電防護において絶縁故障を想定しても十分に低い電圧に制限される
  • 保護アースへの接続を指示しているコンポーネントの機能を担保するのに十分である

等の観点から保護アースの設計がなされている筈であり、設計通りの抵抗値が測定されることが求められます。「いくらに設計したのか」— すなわち、試験結果の妥当性は、設計時点での想定値が示されていなければ評価できない、ということです。

設計段階で適切な保護アース設計を行い、「xx [mΩ] 程度と想定されるのでこれで良し」とした内容通りになっているかを確認する試験です。「電源自動遮断」に関連する場合は、次の項目c) の検証も必要となります。

測定器は、低抵抗を十分に駆動できる定電流源でなければなりません。テスターでは接触抵抗や腐食・緩みなどの不良を検出できないことがあります。実際に保護アースにどれほどの電流が流れるかを想定すると、一瞬で焼き切れるような構造・構成は不適切です。

この試験ではあくまで確認として、特にことわりがなければ10 Aで抵抗値を測定します。それでは試験として不適切である場合には、電流値を低減して試験しますが、それでも0.2A以上です。

タイトルの通り、この検証は、自動電源遮断による保護を実装している場合に実施するものです。

まず、項18.2.1をよく確認する必要があります。

TNシステムの場合:

項18.2.2の試験1(前項 b) で実施済)を実施し、項18.2.3の試験2(故障ループインピーダンス)の検証を行うが、項18.2.4による条件によって手順の適用が異なることに注意すること。

TTシステムの場合:

附属書AのA.2を参照。

ITシステムの場合:

他の規格(IEC 60364-6)を参照。

RCD(漏電ブレーカー)を使用している場合:

メーカーの指示に従って機能を確認すること。一般的には、いわゆる「テストボタン(トリップボタン)」を押して機能を確認します。確認手順と確認の間隔は、メーカーの指示書に記載されていなければならない。なお、RCDはTNシステムでも使用可能であり、追加保護として設計に含めることができます。TTシステムでは、主たる保護手段として使用すべきとされています。

RCDを使用している場合は、上記の確認を行えばこの項 c) は完了です。

TNシステムでRCDを使用せず、過電流保護器によって感電防護のための自動電源遮断を行っている場合は、上記の通り、項18.2.2から項18.2.3へと進みますが、まず項18.2.4の条件を確認する必要があります。項18.2.4の表9には、項18.2.3での故障ループインピーダンスを計算するか、測定するかの指針となる条件が記述されています。

表9のOn siteとは、機械を設置する現地のことです。「いい設計」をしていれば、現地での確認業務を随分低減できることを読み取るべきです。

いわゆるメガーテストです。電力回路と保護アース間は、500 Vdcで1 MΩ以上でなければなりません。

”between the power circuit conductors and the protective bonding circuit” とありますが、回路の目的・用途によらず、「人を感電させるパワーのある回路」と理解することが適切です。項4.1のリスクアセスメントとも整合します。

サージ保護デバイスによって、試験が適切にできない箇所は、試験のために一時的にデバイスを外すか、または保護動作しない電圧で試験します。(ただし、通常使用の範囲で最大となる使用電圧のピーク電圧以上。)

また、トランス巻線の片端を保護アースに接続しているなどの理由で正しく試験できない場合は、保護アースとの接続を一時的に外して試験を実施します。高電圧側の絶縁抵抗の確認は必要です。

耐電圧試験です。電力回路と保護アース間に、定格電源電圧の2倍または1000 Vのいずれか大きい方、50 Hzまた60 Hzを1秒間印加します。破壊的な放電が発生しないこと。

前項 d) と同じく、”between the power circuit conductors and the protective bonding circuit” とありますが、回路の目的・用途によらず、「人を感電させるパワーのある回路」と理解することが適切です。項4.1のリスクアセスメントとも整合します。

試験電圧は、定格電源電圧の2倍または1000 Vのいずれか大きい方です。この定格電源電圧は、「of the equipment (その電気機器の)」定格電源電圧です。機械装置の主電源の定格電源電圧ではなく、それぞれの電気機器における定格電源電圧です。

電圧試験を適切に実施できない場合は、スローアップ(試験電圧をゆっくり上昇)、あるいは、直流電圧に切り替える等して代替試験を行います。規格ではACでの試験が想定されていますが、規格の意図・目的を損なわず、可能な限り確認をしようとするものです。

なお、電圧試験時のリーク電流値については、規格書には特に規定されていません。しかしながら、設計上の想定と異なる場合は、何かのヒントになるかもしれません。

この試験は、適切な場合に、項6.2.4への適合を確認する目的で実施します。(※項18.5はこの一文のみです)

そのため、まずは項6.2.4の要件を十分に理解することが求められます。

たとえばインバーターなどには、「電源を切ってから〇分間は端子カバーを開けないでください」という残留電圧に関する警告表示がある場合、インバーターの端子カバーは警告に従って運用されるべきです。しかし、そこに接続されている配線の反対側は、同様の注意喚起がありますか?〇分以内に触れられる状態になっていませんか?

必要な箇所に残留電圧が残っていないかどうか、測定によって確認します。なお、測定には適切な測定器を用い、放電時間を短くしてしまわないよう、注意が必要です。

この項8.2.6は、漏洩電流が10 mAを超える場合に、追加の対応が必要であることが規定されています。よって、漏洩電流が10 mAを超えているかどうか実測します。

10 mAを超える漏洩電流があるということは、絶縁インピーダンスがそれほど高くないことが想定されます。この状態で保護アースの接続が外れる・切れると、機械装置に触れた際に感電のリスクが高くなります。そのため、項8.2.6の各要件や、項8.3の内容も参考にしながら、リスクの低減策を講じる必要があります。

ひとつではわずかな漏洩電流であっても、複数接続すると漏洩電流は増大するので注意が必要です。

電気機器の機能は試験しなければならない。(※項18.6はこの一文のみです)

特に安全に関連する機能を確認する必要があります。

インターロック、非常停止、動作モード変更、リセット、再始動、等々、試験を効率的かつ的確に実施するため、これらの関連機能を事前に明確にしておく必要があります。

その他、規格に明記されてはいませんか付随する項目として、

  • 温度
    この規格ではあまり詳細に触れられていませんが、断熱の適切さ、ヒーター制御等、適切に設計する必要があります。
  • 音圧測定
    機械規則では音圧測定について要求項目があり、試験時に併せて測定することが多いです。
  • レーザー、UV
    これらの発生源を用いている場合、そのリスクを評価し、適切な設計対応を必要とする場合があります。EN 12198シリーズが参考になります。
  • 電磁界暴露
    高電圧、大電流、高い周波数に伴う電磁界暴露のリスクを検討に含める必要があります。同じく、EN 12198シリーズが参考になります。

CEマーキングは、単に画一的な試験に合格すればよいものではありません。製品が適切で安全であることを、メーカー自身が責任をもって宣言し、「第三者が確認可能な形」で説明できることが求められます。規格適合というのは、リスクアセスメントに基づく一つの手段であり、その妥当性を示す方法のひとつに過ぎません。

その製品に最も詳しいのは、やはりメーカー自身です。
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2025-07-24

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