技術文書の作成に関する要件は?
該当する指令・規則にメーカーが作成する技術文書についての記述があり、まずこれを自身で確認、理解しておく必要があります。記述されている内容は指令・規則によって異なりますが、概ね以下のようなものです。
技術文書作成の要件概要
- 関連する必須要求事項への製品の適合を評価することを可能とし、また、リスクの適切な分析及び評価を含める。
- その評価に関連する限り、製品の設計、製造、使用を網羅し、適用される必須要求事項を特定しなければならない。
- 適切であれば、少なくとも以下の要素を含むものとする。
- 製品の一般的な説明
- 設計および製造の概念図、コンポーネント、サブアセンブリ、回路などの図面
- それらの図面や図画、製品の操作を理解するために必要な記述や説明
- 用いた整合規格のリスト
- 行われた設計計算、実施された試験の結果、等
- テストレポート
製品が該当する指令・規則によっては、上記と異なる要件が記述されている場合がありますので、必ず指令・規則の原文を参照する必要があります。
技術文書に関する要件は指令・規則に記載されています
必須要求事項は指令・規則に記載されています
指令・規則は、技術文書作成にフォーム、書式等を指定していません。書き方に関して事細かに指示を与えるものではありません。それは製品個別に異なります。第三者(ここでは特に欧州各国の市場監査担当者)が、製品の指令・規則への適合を評価できること、すなわち、指令・規則の必須要求事項に関連するリスクが当該製品にはない、解消されている、または許容可能なレベルに低減されていることが確認できる内容が必要です。
技術文書に”正解”はありません
技術文書はこう書くのが正しいというような正解はありません。しかし、ダメな技術文書はあります。ダメな技術文書の典型的な例は、
- リスクの適切な分析及び評価が含まれていない。
- 関連資料やレポートを集めただけ。
- 整理されていない。
- 当該の製品に関係のある記述、資料なのか判然としない。
- 適合を説明しようとする範囲・範疇が不明確、部分と全体が不明確または整合しない、主語が何を指しているか特定できない。
- 資料・文書間の関連性を追えない、または多大な労力を要する。
正解がないということは、”ダメ” じゃなければよいのです。メーカー自身が正解を決める、ひとつの製品についての技術文書としての正解を出す、ということです。
リスクアセスメントを技術文書に含めること
第三者(ここでは特に欧州各国の市場監査担当者)が、関連する必須要求事項への製品の適合を評価することを可能にしなければなりません。
そのためには製品に関連するリスクが、該当指令・規則の必須要求事項に該当する、あるいは該当しないことについて、第三者が理解できるように記述する必要があります(技術文書作成の要件概要—項1)。
ここでいうリスクの適切な分析と評価は、『ブルーガイド4.1.2.2 整合規格の役割』で説明される必須要求事項の該否選択であり、メーカーの責任の下で行われるものです。
製品に関連するリスクの適切な分析と評価については、製品の『設計』、『製造』、『使用』を網羅し、指令・規則の必須要求事項と照らし合わせてその該否を決定する作業となります。(技術文書作成の要件概要—項2)
ブルーガイド4.1.2.2 整合規格の役割
リスクアセスメントフォーム提供/ワークショップ開催
指令や規則によって製品を画一的に分類し、製品がどの分類に属するかによってアセスメントの要/不要が決定されるのではありません。個別の製品についてのリスクはメーカーが把握しており、そのリスクをカバーしている指令・規則を、その適用範囲も併せて参照し、メーカーが決定します。
CEマーキングに関連する指令・規則は様々あり、指令・規則は互いに排他的にその適用範囲を定めていません。多くの場合、一つの製品が複数の指令・規則に該当します。CEマークの表示はそれら複数の指令・規則に該当し適合していることを意味します。
複数の指令・規則は、それぞれに独自のリスクのみを扱ってこれに対応する必須要求事項のみを定めているのではありません。製品ジャンル、用途、技術的側面などをテーマとしてそれぞれに必須要求事項が定められています。
複数の指令・規則でそれぞれに定められている必須要求事項は、同様の要件が重複している場合があります。このような場合には、どちらかの指令・規則に、『他方の指令・規則の必須要求事項を含める』または『他方の指令・規則に該当する場合にはこの指令・規則は適用されない』旨が記載されています。CEマーキングに関連する指令・規則どうしの関係性に注意する必要があります。
指令・規則の適用範囲だけではなく、その指令・規則が適用外となる旨の記述もよく確認する必要があります。一般的により具体的な要件が定められている指令・規則が優先します。
(ブルーガイド2022 §2.7. Simultaneous application of Union harmonisation actsも参照)
製品がCEマーキング関連の指令・規則に該当しない、または製品のある側面についてカバーする指令・規則がない場合に、その製品、その側面については、一般製品安全規則(CEマーキングではない)に該当する可能性があります。
このことは『製品が適切であることを市場に対して提示するために特化された枠組みが存在しない』こと意味し、より一層抽象的な、具体的でない要件に対応することが求められます。一般製品安全規則、第5条『安全な製品のみ市場に出すこと』について、細分化・具体化された必須要求事項なしに適合性を提示することになります。
リスクの適切な分析と評価では、
『指令・規則の必須要求事項に関連するリスクが製品にあるか』
『製品にあるリスクをカバーする指令・規則があるか』
の両面から考慮する必要があります。指令・規則、その必須要求事項を含めて、該当か非該当か明確でわざわざアセスメントをするまでもなく自明である場合もあれば、その危険源を見定めてリスクを適切に評価した上で判断すべき事項もあります。
これらの判断およびリスクアセスメントは、その基礎となる製品の用途、使用条件、構成要素、動作原理、構造等に依拠します。これらの基礎情報は、リスクアセスメント手順における制限事項と危険源の特定に相当するものであり、判断・リスクアセスメントの内容・結果の根拠となるものです。このような基礎情報は、リスクアセスメントと関連付けて技術文書に含め、それが適切ならば説明記述を加える必要があります。
該否判断、リスクアセスメントの根拠として技術文書に含めるべき文書や記述について、これという決まりはありません。それは取扱指示書かもしれませんし、全体構成図、外観図、回路図かもしれません。指令・規則の必須要求事項の該否判断に関連する内容が記載されている資料・文書を適切に添付してください。(技術文書作成の要件概要—項3)該否判断、リスクアセスメントの根拠となる文書は、技術文書作成の要件概要—項3a,b,c のようなものが含まれるでしょう。
適合の範疇・メーカーの責任範囲を明確にする
フォーム提供/ワークショップ開催
いずれにしても、技術文書の作成に関して事細かに指示を与えるような具体的な要件は指令・規則には記述されていません。フォーム、様式も定められていません。
一例としてEUANB TGN37にはこのように記述されています。
The notified body shall allow any format and structure of the risk analysis and assessment as part of the technical documentation because this can only be entirely determined by the manufacturer.
ノーティファイドボディは、技術文書の一部としてのリスク分析及びリスクアセスメントのいかなる形式及び構成も認めなければならない。なぜなら製造業者によってのみ完全に決定され得るからである。
TGN 37 Guidance for a Risk Assessment under Annex III of Directive 2014/30/EU
May 2020, Version 2.0
EUANB: European Union Association of EMC Notified Bodies
多くの製品は、『モジュールA:自己生産管理による自己宣言』でよく、ノーティファイドボディの関与を必要としません。医療機器や爆発奮雰囲気中での使用を可とする製品、その他リスクが高い製品は、他のモジュールによってノーティファイドボディの関与が必要とされており、技術文書を提出する必要があります。
フォーム、様式は任意であっても、他人が見やすく、誤解されにくいように構成することは当然です。
もちろん欧州の公用語で作成しなければならない(英語でよい)ことは、”メーカーの責務” のひとつとして定められています。
第三者による適合評価を可能にすること
技術文書は、製品を知らない第三者が適合性を評価できる内容にする必要があります。”適合宣言しているこの製品はどのようなものか” について、また、”製品に関連するリスクをどのように低減しているのか”について、製品全体を網羅したものでなければなりません。
第三者による適合評価を可能にするために、第三者が検証できる構成・内容にする必要があります。疑いを生じないよう、誤解を生じないように、明確に構成、記述しなければなりません。
この記事は、弊社作成の技術資料【メーカーのための技術資料の作り方(有償)】からの抜粋です。以下の詳しい内容につきましては、是非お買い求めください。
- 何の製品についてか、作成者、内容についての問合せはどこの誰か明確に示す。
- 技術文書全体の構成を明確に示す。
- 製品の全体、適合宣言する製品の範疇を明確に示す。
- 製品の適合を宣言する条件を明確に示す。
- 製品に関連する危険源を明確に示す。
- 製品に関連する危険源の見積、査定を示す。
- 危険源そのものが除去、矮小化されていることを示す。
- 適切な防護方策の設計、実証結果を示す。
- 使用に関する情報が製品に付与されていることを示す。
以上、指令・規則の枠組みに寄り添うことで、製品に許容できないレベルのリスクが結果として残っていないこと、これを明快に提示する手法としてリスクアセスメントを活用し、製品は適切で安全に使用できることについての適切な技術文書を作成することができます。
メーカーの値打ち
適切で安全に使用できる製品を設計、製造し、技術文書を作成することは、メーカーに固有の責務です。つまり、それをするのがメーカーです。
一般にはそれが簡単ではないからこそ価値があり、だからこそメーカーです。
メーカー自身による技術文書作成をアシストします。
技術文書を作成するためには、ステージ1からステージ4での成果と同等以上の準備が必要です。
2024-10-31
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適合宣言の範疇、製品仕様、Intended use analysis、リスクアセスメントの最初のステップです。
指令の必須要求事項と製品に内在するリスクを照査します。
評価・試験を効率よく進めるためには、適切な計画の下で予め必要な物を揃え、必要な事項を決定します。
CEマーキングでよく実施される評価・試験を迅速に、低価格で実施します。
技術文書ドラフト版(英語)を作成します。(ワードファイル)
適合宣言書ドラフト版(英語)を作成します。(ワードファイル)
Regulation (EU) 2019/1020 のAuthrised Representativeのタスクを履行します。
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