整合規格は法規制ではない
整合規格とは、該当する指令に適合していることを推定可能とする技術仕様です。製品が指令の必須要求事項(もしくは安全目標)を満たしていることをスマートに提示するためのツールであり、その使用は任意で、メーカー自身のリスクアセスメントに基づいて自由に選択します。
各指令に紐づけされ、EUに流通させる製品の仕様を指定・制限しようとするものではありません。
メーカーが達成すべきなのは、指令の必須要求事項(あるいは安全目標)を満たし、また、満たしていることをいつでも文書で提示できることです。したがってまずは、指令とその必須要求事項(あるいは安全目標)をよく理解することが必要です。整合規格による評価・試験は、指令の必須要求事項(あるいは安全目標)を満足することを念頭に計画を策定したうえで実施します。
整合規格は自由に選択、整合規格の使用は任意
整合規格 (harmonised standards) について、欧州委員会の【 Harmonised Standardsのページ 】には、次のように記載されています。
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整合規格の使用
これらの規格の使用は任意である。製造業者、その他の経済運営者、または適合性評価機関は、法的要件の遵守を実証するために、別の技術的ソリューションを自由に選択することができる。 |
また、指令には、次のように記載されています。
(代表的な指令から抜粋)
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低電圧指令 2014/35/EU 第12条 整合規格に基づく適合性の推定欧州官報に掲載された整合規格またはその一部に適合する電気機器は、それらの規格またはその一部によって、第3条によって述べられ、付属書Ⅰに記述されている安全目標に適合しているものと推定される。 |
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機械指令 2006/42/EC 第7条 適合性の推定と整合規格 2.欧州官報に掲載されている整合規格に適合して製造された機械は、整合規格でカバーされている基本的な安全衛生要件を満たしているものと推定される。 |
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RoHS指令 第16条 適合性の推定 1.反対の証拠がない場合、加盟国は、CEマーキングの付いたEEE《電気・電子機器》はこの指令に適合していると推定する。 2.第4条の要件を遵守していることを証明する試験及び測定が実施された、又は欧州官報に記載された整合規格に従って評価された材料、構成要素及びEEE《電気・電子機器》は、この指令の要求事項に従うものと推定される。 |
整合規格を用いる
製品の安全上のリスク、構造等によっては、規格の要求事項が過剰であったり、カバーされていない場合があり得ます。これはある意味で当然で、各メーカーの個々の製品に合わせて規格書を作成しているわけではないのです。
また、規格は、その要求を満たさない製品は市場への投入を許容しないというような、法令そのものではありません。あくまで、指令への適合性に推定をあたえる技術仕様であり、適合性を提示するためのツールです。メーカーの自由な開発設計、その製品の流通の制限を意図しているものではありません。
適切なアセスメントを行い、どの規格のどの部分を用いるか、メーカーの責任のもとに決定しなければなりません。指令への適合性を提示するうえで、漏れの無いように、必要に応じて、適切な規格を選択します。規格を複数選択したり、部分的に用いることもあり得ます。
その規格を用いた/用いなかった理由は合理的に説明できなければなりません。規格選択のプロセスを、第三者が理解できるように記録に残し、技術文書として提示できるようにします。これには、定められた書式はありません。規格選択のプロセスは、リスクアセスメントの手法で記録に残すと第三者が理解しやすいと考えられます。
指令の必須要求事項(ESR)と、メーカーが自由に選択した整合規格とのあいだには合理性が必要です。上図は、その合理性を検討するための、メーカーによるリスクアセスメントの実施を示しており、CEマーキングのブルーガイドに記述されています。
合理性の検討内容は、技術文書(CEマーキングの勘どころ > 【 技術文書 】)に記載することが求められます。
欧州指令の勘どころ >【 整合規格Annex ZA/ZZについて 】もご参考ください。
参照記事リンク
2018-03-03
TOPIX
- 整合規格は、指令への適合性について推定を与える技術仕様・試験方法である
- 整合規格は、指令への適合をスマートに提示するためのツールである
- 製品の構造・用途から適切な規格あるいはその部分を選択し用いる
- 規格は、メーカーの責任において選択する
- 規格選択のアセスメントを実施し、記録に残す
- 整合規格は、欧州官報で発表され、インターネットでそのリストを閲覧できる
- 整合規格は、著作物であり、購入しなければならない
CEマーキング
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