➧ 目 次
1.指令・規則の特定
欧州には様々な指令・規則があり、その中でCEマーキングに関連する指令・規則について、製品が該当するかどうか特定する必要があります。
製品に該当する指令・規則は、メーカーの責任において特定しなければなりません。
製品に該当する指令・規則を特定するためには、どのようなCEマーキング関連指令・規則があるかを知ることと、自社製品の用途、動作原理などの前提条件を明確にし、
製品に関連するリスクをカバーする指令・規則はどれか
を判断しなければなりません。
指令・規則の適用範囲を確認することはもちろんですが、その指令・規則の必須要求事項を確認し、製品に関連するリスクがカバーされているかを確認することが重要です。
指令・規則の関係性に注意する必要もあります。一般に、より具体的な指令・規則が優先されます。
製品に関連するリスクがCEマーキング関連指令・規則でカバーされていない場合は、そのリスクについてはGPSR(一般製品安全規則)の規定が適用されます。
GPSR(一般製品安全規則)が除外としている製品を除いて、すべての製品は、GPSRに該当します。その上で、CEマーキング指令・規則のどれかに該当するならば、CEマークを表示することができます。
全体を照らしているイメージです。
最終的に、メーカーは製品が指令・規則に適合していると自ら判断し、EU適合宣言書(EU Declaration of Conformity)を作成します。
指令・規則の該否を決定するプロセスは重要です。このプロセスにおける製品に関連するリスクの評価は、「この製品がなぜその指令・規則に該当するのか」を説明するものであり、技術文書に含めることが求められています。
以上、製品に該当する指令・規則を特定することは必須であり、指令・規則がカバーしているリスク、適用範囲と、製品に関連するリスク、用途、動作原理などよく照査して決定する必要があります。
指令・規則の特定のためのコンサルティング、アドバイスについて
製品概要だけをもとに指令・規則を挙げることはできますが、それは初期検討の候補に過ぎません。
メーカーは製品がその指令・規則に適合していると宣言する責任があります。よって、製品に該当する指令・規則を正式に特定するためには、製品に関連するリスクをよく把握し、なぜその指令・規則が該当するのかについてメーカー自身で説明できるようになることが重要です。
メーカー自身でできるようにサポートします。
2.「指令・規則に適合」とは
「指令・規則に適合」(その旨を宣言書に記述しなければなりません。)と宣言することは、その指令・規則の必須要求事項を製品が満たしていることを、メーカー自らが宣言していることを意味します。
指令・規則の必須要求事項はその指令・規則に規定されており、メーカーはその指令・規則を選定するためにその必須要求事項を確認し、また、製品を適合するために必須要求事項をよく理解して、これを満たす製品を設計しなければなりません。
ここまでの説明を簡単にまとめると、
製品に関連するリスクをカバーする指令・規則を決定
(その必須要求事項を照査することも含む)
⇩
必須要求事項を満たす設計、製造をする
⇩
該当する指令・規則への適合を宣言する
必須要求事項を満たす設計とは?
メーカーは製品に該当する指令・規則を特定する際に、その必須要求事項を確認する必要がありますが、該当指令・規則を特定したその次には、さらに明確に必須要求事項を把握しなければなりません。
必須要求事項(低電圧指令の場合は安全目標)は、原則論的、一般論的なものです。「指令・規則に適合」とはこれを満たすということであり、ここでメーカーは製品について、「満たした状態」を具体的にどう実現するのかを検討しなければなりません。
具体的にどう実現するのか―
これはメーカーが自由に競争する領域です。
正解はありません。
どう設計すればよいのか?
前述のように、指令・規則の必須要求事項を満たすにはどのように設計すればよいのか、このことについて、正解はありません。
こう設計すればよい、という正解はありませんので、逆にいえば、マズい設計をしなければよいということです。
必須要求事項に違反する、あるいは抵触するような設計をしなければよいです。
そうすると、「それならこの指令・規則に該当しなくなるのでは」という状態になる、あるいはその状態に近づくかもしれません。
このとき製品は、リスクが限定された状態、リスクが低減された状態に近づいている筈であり、このような状態は好ましいと考えられます。
これはリスクに対してどのように対策するかというよりも、そのリスクとなる部分、側面は本当に必要か、他の手段に置き換えることはできないか、できないとしても限定あるいは縮小できないかをまず検討するという考え方です。
マズい設計をしなければよいとは言ってもこれは簡単な話ではありません。だからこそプロフェッショナルとしての、メーカーとしての値打ちがあります。
製品は大なり小なり、何らかのリスクを内在しており、そのリスクゆえに指令・規則が適用されます。そのリスク部分や側面が製品の本質であり、避けられないなら、どう解決すればよいか。一つの正解が定められているわけではありません。
このようなときには、指令・規則の必須要求事項に対し、「適合の推定」を与えるとあらかじめ認められた「技術仕様」を参照することができます。これが「整合規格」です。複数または部分的に参照することができます。
ただし、整合規格はやみくもに使えばよいというものではありません。
指令・規格の必須要求事項と整合規格とは、一対一対応していません。
整合規格は、正解を規定しているものではありません。画一的な合否判定基準ではありません。
整合規格は、法的に必須ではありません。法律でも指示書でもありません。
参照して用いようとする整合規格が、該当指令・規則の必須要求事項をカバーしており、なおかつ、製品に適用できるか、適用して問題の解決になっているかを判断しなければなりません。
ブルーガイドで説明されています。
この、整合規格を用いる/用いないという判断をするプロセスも重要です。このプロセスにおける製品に関連するリスクの評価は、「この製品と整合規格でなぜその指令・規則の必須要求事項を満たしているといえるのか」を説明するものであり、技術文書に含めることが求められています。
製品に関連するリスクを軸に判断すること。
該当指令・規則の特定と用いる整合規格の決定は、製品に関連するリスクを軸に判断することが大切であり、すべて「製品が適切で安全使用できる」かどうかに繋がるものとして、一貫性が重要になります。
整合規格の決定のためのコンサルティング、アドバイスについて
製品概要だけをもとに整合規格を挙げることはできますが、それは初期検討の候補に過ぎません。
メーカーは製品がその指令・規則に適合していると宣言する責任があります。よって、製品に該当する指令・規則の必須要求事項と製品に関連するリスクをよく把握し、その整合規格を用いることが適切であることをメーカー自身で説明できるようになることが重要です。
メーカー自身でできるようにサポートします。
3.適合を自ら確認する
上述のように、指令・規則とその必須要求事項を特定し、用いる整合規格を決定して、参照して設計・製造します。そして製品が形になれば、あらためて適合を確認します。
製品に関連するリスクをカバーする指令・規則を決定
(その必須要求事項を照査することも含む)
⇩
必須要求事項を満たす設計、製造をする
⇩
⇩
該当する指令・規則への適合を宣言する
製品の適合の確認は、メーカー自ら行います。
評価・試験を技術文書作成の前工程と捉え、技術文書を完成させるために、必要な評価・試験を行います。
技術文書の作成・保持は、メーカーに固有の責務です。
つまり、適合の確認をして完了ではなく、これを技術文書作成の準備工程として必要な確認を行うということです。技術文書は、製品の適合についての検証が可能でなければならない文書一式です。何が必要で、何が不要か、よく計画することが合理的です。
技術文書とその計画に必要なことは、一貫性です。
製品の仕様、前提条件から、関連するリスク、該当指令・規則、用いた整合規格、そして評価・試験の結果に至るまで、製品が適合していることについての一貫性です。
CEマーキングの評価・試験とは?
CEマーキングの評価・試験は、該当指令・規則の必須要求事項を満たしているかの確認、そのことを技術文書で提示するために行います。
一貫性の観点から、評価・試験は、指令・規則の特定のためのリスクアセスメント、用いる整合規格を決定するためのリスクアセスメントを基礎とします。
言い換えれば、製品に関連するリスクにかかわらない評価・試験は必要なく、リスクにかかわることについては評価・試験し、リスクが十分に、確実に低減されていることを確認する必要があります。
このような確認には、ほとんどの場合、製品の構造、表示、取扱指示書の内容などが含まれます。
試験らしい試験をするのは、その一部の確認に過ぎません。
どう評価・確認するのか?
多くの場合、用いる整合規格の決定のリスクアセスメントを基礎として、用いる整合規格の要件について完成品と関連文書(取扱指示書、各種図面、部品リスト、設計計算書、等々)を確認します。その中には試験を実施する要件もあります。
評価・試験を実施し、そのレポートを作成して技術文書に含めます。
自社で実施することが困難な場合、あるいはコンプライアンスの観点から第三者に評価・試験を委託することもできますが、あくまでメーカーの責任の下委託するものです。
該当指令・規則によるカテゴライズによって、ノーティファイドボディの関与が必要とされ、試験サンプルと技術文書の提出、さらには品質保証体制の監査を受ける場合もあります。(医療機器など)
以上、CEマーキングはメーカー自身が製品の適合を確認します。第三者に委託しても、ノーティファイドボディの関与を受けても、メーカーの責任を免れるものではありません。
評価・試験のご依頼、コンサルティング、アドバイスについて
簡易に整合規格の候補を提案することは可能ですが、正式な提案、アドバイスのためには、製品に関連するリスクを明確にする必要があり、有償とさせていただいております。
評価・試験のご依頼で、テストプランをご提示いただければ、迅速に安価な見積書を作成いたします。
特にEMC試験では、適切なリスクアセスメントにもとづくテストプランが大切です。
4.技術文書を作成する
前項ですでに触れましたが、メーカーは技術文書を作成・保持するという、他の経済事業者には委譲できない固有の責務を負っています。
製品に関連するリスクをカバーする指令・規則を決定
(その必須要求事項を照査することも含む)
⇩
必須要求事項を満たす設計、製造をする
⇩
適合を確認する―評価・試験
⇩
⇩
該当する指令・規則への適合を宣言する
市場監視当局の要請によって、速やかに技術文書を提出しなければなりません。
市場監視当局は、技術文書について、メーカーに尋ねるのでメーカーが回答できなければなりません。
技術文書の不備は、適合についての疑義を生じます。
技術文書についての要件は、指令・規則に規定されていますが、これはガイドライン的な内容であり、そこに挙げられている文書を機械的にファイリングすればよいというものではありません。
技術文書の内容についても、これが正解というものはありません。
適合について検証できる内容が網羅されている必要があります。しかし様式、フォームは定められていません。
そして、指令・規則や整合規格の改定、製品の設計変更に応じて、技術文書は更新していく必要があります。
ここでの説明の構成上、技術文書については、4番目の項目として記述していますが、実務上はもっと早い段階から着手し、平行して進めるのが合理的です。
設計のインプット文書、アウトプット文書は、概ねそのまま、技術文書に含める文書になります。逆にいえば、そのつもりで資料を集め、図面、文書を作成することです。
最初はCEマーキングのために技術文書を作成したとしても
技術文書は本来、ものづくりのために社内で共有し、管理するものです。作成して終わり、ではありません。
技術文書を財産とし、活用していくことが大切です。
欧州では、技術文書が作成されていることが当然の前提であり、市場監視当局から求められれば提出してください、というものです。CEマーキングによってあらためて作成を求めている話ではないのです。
技術文書ドラフト作成サポート
技術文書の作成は、メーカーに固有の責務であり、代行することはできませんが、サポートは可能です。
社内での共有、更新を考慮したテンプレート(ワードファイル)でその後の運用にご活用ください。
5.適合宣言書を作成する
CEマーキングは、メーカー自ら製品の適合を宣言し、宣言書を作成します。宣言は市場に対してするものであり、特定の組織や機関に提出するものではありません。
製品に関連するリスクをカバーする指令・規則を決定
(その必須要求事項を照査することも含む)
⇩
必須要求事項を満たす設計、製造をする
⇩
適合を確認する―評価・試験
⇩
技術文書を作成・保持する
⇩
該当する指令・規則への適合を宣言する
市場監視当局の要請によって、技術文書と併せて適合宣言書を提出しなければならない場合がありますが、これは市場監視で求められる場合であって、申請等ではありません。
適合宣言書はメーカー自身が作成します。
適合宣言書についての要件は、指令・規則に規定されていますが、これは必要な要素を規定しているのであり、書式、フォームはありません。
指令・規則によって、若干独自の要件があるので、要件を網羅したひとつの宣言書を作成します。
製品ファミリーとして、複数のモデルを宣言することはできますが、宣言対象を特定できない曖昧な記述をすると、すべて不適合とみられる可能性があります。
また、指令・規則や整合規格の改定、製品の設計変更に応じて、適合宣言書は更新していく必要があります。
誰がサインしますか?
誰がサインするという規定はありません。その会社の人員配置、組織、職務分掌次第です。
たとえば、ひとつの製品モデルを市場に出す、社の看板で販売することを決裁する人がサインするのは自然で、適切でしょう。技術担当者がサインするのは適切とはいえません。
CEマーキングは、製品を適合するという技術的な問題だけではありません。各指令・規則にメーカーの責務が規定されており、遵守することが求められます。その責務とは純粋に技術的なものだけではありません。
適合宣言書にサインする前に
- 技術文書は、製品を知らない第三者が適合性を検証できる内容になっているか
- 製品のトレーサービリティ、出荷管理ができているか
- クレーム対応体制、市場監視当局への報告体制ができているか
- 市場監視当局からの問い合わせに対応する体制ができているか
- 適合宣言した製品モデルの適合性を維持する体制ができているか
- 指令・規則、整合規格の改定に対応する体制ができているか
以上、メーカーの責務として規定されている事項と、当然必要であろうと考えられる事項をリストアップしました。個別にできている/できていないの判定基準などはありませんが、求められている事項です。
CEマーキングは、適合宣言して終わりではありません。むしろスタートです。
適合宣言ドラフト作成と総点検サポート
適合宣言書の作成はメーカーの責務であり、代行することはできませんが、サポートは可能です。
適合宣言書のテンプレート(ワードファイル)を提供、また、サイン前の総点検のサポート、アドバイス可能です。
状況によっては、EU内代理人との契約が必要な場合もあります。
6.CE取得するとは?
ここまで、CE取得の実務について説明してきました。
指令・規則の特定から、リスクアセスメント、評価・試験、技術文書、そして適合宣言書の作成まで、メーカー自身が決定し、実施しなければならないことの概要です。
さて、メーカーは何かを取得したでしょうか。
実は、CEマーキングは、取得するものではなく、メーカーが宣言をするものです。(たとえノーティファイドボディの関与を受けても。)
CEマークは、EU公式サイトからダウンロードして、製品に表示するだけです。登録も料金も必要ありません。
市場での自由な流通のためにそうしてください。ただし、メーカーとしての責任は伴います。
CE「取得」とは慣用的な言い方ですが、EUの指令・規則やブルーガイドなどの原文では、そのような表現や言い回しは出てきません。一貫して規定されているのは、メーカーが製品の適合を評価し、自ら適合を宣言することです。
CEは「取得」ではなく「自己宣言」、この違いを理解することが、CEマーキング実務の出発点になります。
お気軽にご相談ください